□ 2004.07.16 足利市建築調査 

足利市内近代化遺産調査(平成14年度)および、足利市民家調査(平成6年度)を基にした、建築調査が今年も始まりました。上記の悉皆調査でピックアップされた建築物のうち、歴史的・建築的に特筆されるものを個別に調査してゆくものです。
昨年度に調査を実施した長林寺本堂と織姫神社は、現在、国登録有形文化財となっています。

【長林寺】
足利城主長尾家縁の寺。創建は文安5年。大祥山長雲寺と称していたが、享徳2年以降に瀧沢山長林寺と改称した。現境内地は慶長13年に伽藍を造営したのが始まり。以降文久2年の火災を経験しながらも、現在に至っている。現在の本堂は鉄筋コンクリート平屋建て。設計は社寺建築の設計で評価の高い小林福太郎。昭和2年に設計、同3年工事着工、同4年に竣工した。
伝統的な禅宗様に基づく本堂は、本来木造であるべき様式建築を、詰組の省略などを通し、鉄筋コンクリート造としての技術、意匠の面で可能性を追求した作品。中国の禅堂をモチーフにし、木造を感じさせるスケールと、コンクリートの質感を生かした質実な空間を表現した秀作といえよう。

【織姫神社】
宝永2>年の創立。祭神は八千々姫命・天御鉾命で機織の守護神として信仰されている。明示12年に現在地に遷宮された。
現在の社殿は昭和9年から同12>年にかけて建築された、鉄筋コンクリート造平屋建ての、小林福太郎による市内で2番目の作品である。
中央に拝殿、両側に翼楼(神輿舎、神饌所)を配し、拝殿と翼楼を歩楼(渡廊)で結ぶ。拝殿後方には幣殿と本殿が続く。この意匠は平等院鳳凰堂をモデルにしたといわれる。
神社の本殿・拝殿は木造で建築することが本来であると考えていた小林福太郎が鉄筋コンクリートで設計した伝統様式の作品。鉄筋コンクリート造であるにも関わらず、木造を感じさせる繊細な意匠表現がなされている。


 □ 2004.07.16 明洞大聖堂

平成14年3月にソウルで開かれた「明洞大聖堂修復フォーラム」に講師として参加し、煉瓦造の修復について講演を行いました。主催は韓国建築家協会。プログラムは、講演と質問会とで構成され、講演者は他に金晶東氏、Michael Stock氏。

明洞大聖堂とは
ソウル市街の中心部、小高い丘の上に立つ、韓国を代表するカトリック聖堂です。現在は国の史跡に指定されています。
明洞大聖堂は国産煉瓦を2枚半で積んだ、建築は1800年代です。鐘楼を兼ねた尖塔をもち、寝廊の両側に側廊が配置されたオーソドックスな平面形式を持っています。内部はアーチやヴォールト天井を多用し、パイプオルガンや、新約聖書と韓国における聖人をモチーフにしたステンドグラスで飾られています。

修復フォーラムの目的
明洞大聖堂では、煉瓦壁面及び礎石部分の劣化が進んでおり、その修復方法や修復方針を考察することが急務となっていました。また煉瓦外壁表面については、現在までに2度の部分修復が行われており、その修復の再考察を含め、今後予定される修復のステップにすることを目的としていました。  講演の概要
今回の講演は、日本大学理工学部の片桐教授と連名で、「日本における歴史的建造物の修復理念と組積造修復の現況」を表題として講演しました。
題材は、
  @         修復における基本理念
  A         実際の修理工法・組積造の重要点
  B         l明洞大聖堂における考察
です。

現在の明洞大聖堂
修復フォーラムで交わされた意見を基に、現在韓国のチームを中心に修復が進んでいます。


 □ 2004.07.10 足利市近代化遺産調査

平成12年度より行ってきた足利市近代化遺産調査が全調査を終了しました。

市内全域を対象に行った本調査は、明治以降の産業遺産・洋風建築・土木遺産を取り上げています。
足利市の近代は織物工業と、石灰工業を中心に発展しました。それらの工場建築や、製品の運搬を担った軽便鉄道、東武鉄道の橋梁群など、特徴ある遺構が確認されています。他にも群役場・学校・医院や公共建築物、記念建築物も多く残っており、バラエティに富んだ調査結果が判明しました。

本調査で判明した結果および、代表的な近代化遺産の概要をまとめた報告書が、平成15年度に「足利市文化財調査報告書 第3集 足利市の近代化遺産」として発行されました。
閲覧場所等の詳しい情報は、足利市教育委員会文化課まで。