無住庵

 本建物は、松永記念館の設立者松永安左ヱ門(耳庵)が、板橋(小田原市)にあった居宅「老欅荘」の敷地内に設えた茶室です。埼玉にあった民家の部材を転用して建築したもので、「田舎家」と呼ばれていました。耳庵の没後は、近隣の民家に移築されていました。
 平成29年に小田原市に寄贈され、歴史的風致形成建造物が指定されました。
 その後、松永記念館整備活用事業の一環で、本建物を茶室及び体験学習施設として活用するため、松永記念館での移築復元が決まり、平成30(2018)〜令和2(2020)年に解体保管工事、移築復元工事が行われました.。
 本建物の復元にあたり、当時の古写真や痕跡調査等から創建当時の姿が明らかとなったため、創建時の姿に復元することとしました。
 本建物は現行の建築基準法に則るため、鉄筋コンクリート基礎の新設や構造補強、排煙窓の設置を行いました。
 屋根は、創建時茅葺屋根でしたが、建築基準法上、不燃材としなければならないため、銅板葺(茅葺のフォルムを模した形状)とし、軒裏の一部に茅葺を復元しました。この銅板葺屋根は将来、茅葺屋根に復元することができるよう配慮した可逆的な工法としました。